【文豪】

僕と僕の玩具屋さん⑤

「君は学校に行かないの?」
「行ったほうがいいざんす?」
 どうだろう、僕は高校中退の身であるし、滅多なことは言えない。
「友達はいる?」
 総統は黙った。動かないはずの小さな、拳大の飛行機を飛ばしてみたりして。飛行機はもちろん彼の腕の長さと同じ距離しか飛ばなくて、彼は飽きたように投げ出した。
 不意に総統は目を輝かせ、僕を見る。
「あんちゃんさん、ぼくのダチになっていただけやすか?」
 その口調だと友達というより親分と子分だ。
 そんな心の中の突っ込みを抑え込み、僕はクスクス笑う。
「もちろんだよ。でも僕は、何番目かの友達でいい」
 なんばんめ? と尋ねられたので、ずーっと後、と答える。あまりピンと来ていないようだったが、僕はそれでもよかった。
 だってもうすぐ、四時を過ぎる。
 そう思ったその時、カランコロンと力強く鳴るベル。ほらね、と僕はそれを指差した。
「君のお友達は、ここに来ればたくさんいる。僕はその、最後の方でいいんだよ」
 いつも来る小学生たちである。その中の一人が、僕らに気付いたようだった。
「おい店員! そいつだれだよ」
 生意気なその口ぶりに苦笑しながら、僕は総統を前に押し出す。
「知らないのかい? 同じ小学校じゃないかと思うんだけど」
 なぜならこの町には小学校が一つしかないからだ。
 きちんと紹介してあげなければ、と思ったのだが、僕は総統の名前を知らなかった。その代わりに、総統に生意気な小学生の方を紹介してやることにした。
「この子は、城山浩太くんだよ」
「『このお方は城山浩太様です』だろ店員」
 近頃の小学生はみな、こうも個性が豊かなのだろうか。
 浩太は、総統のことをしげしげと見て鼻を鳴らす。
「やっぱりそうだ。お前、ジョンだろ」
「淳(じゅん)ですぜ……?」
「お前がジュンなわけあるかよ。ジョンって顔だろ」
「でも、淳なんですぜ」
 なんだかまとまりそうにない。どうしようかと見ていると、浩太はちょっと肩をすくめて仲間たちを指差した。
「おいジョン、あっちで遊ぼうぜ。こんなぼさっとした店員の前じゃなくてさ。今、超カッケーやつ集めてんだ、カード。ほら、なにしてんだよ」
 あっという間に、総統は連れていかれる。どうやら彼が、孤独感から戦争を起こすことはなさそうだ。僕のように堕落することもないだろう。

著者

緒川 火華
緒川 火華
 密かに小説家志望です。情景描写が苦手ですので、厳しい目で見てやってください。
 よろしくお願いいたします。
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